メルカリ
急成長するフリマアプリのビジネスモデル
近年まで、自分の必要なくなったものなどを売りたいと考えた際、思い浮かべるのは「ヤフオク」などのオークションサイトであったであろう。さらに、他にも多くのオークションサービスが乱立している中、顧客ニーズに対し独自のポジションを短期間で構築したサービスがある。それが「メルカリ」というサービスである。2013年7月に創業したこのサービスは、わずか3年で100億円の売り上げを達成するサービスへと成長し、アプリのダウンロード数は100万ダウンロードを達成するという偉業を成し遂げている。
なぜ、またどのようにこの競争の激しい競争環境の中でこれほどの急成長を成し遂げることができたのであろうか。本記事では「ビジネスモデル」、「どのような顧客ニーズを満たしているのか」、「どうやって儲けているのか」という章立てで、「メルカリ」のビジネスモデルを紐解き、成長するサービスに必要なことは何かを明らかにしていく。
key points
- 競合に比べ、出品者の参入・出品のハードルを下げたことにより、 出品者が多く登録・出品
- 利用者画面が掲示板形式になっており、興味のある無しに関わらず、タイ ムラインに様々な商品が流れてくることにより、アプリを多く開く機会があ る
メルカリ
ビジネスモデル
「メルカリ」のビジネスモデルは一言で表現すると「C2C型マッチングプラットフォームモデル」である。
※「C2C」とはConsumer to Consumerの略。インターネットの普及で変化した企業の関わり方を端的に表現するために生まれた用語の一つであり、「一般消費者と一般消費者の間の取引」を意味する。
「マッチング型プラットフォームモデル」は、ユーザーが集まる「場」を提供し、商品やサービスの提供者と利用者をマッチングするプルラットフォームを提供することで、その場の利用料を得るビジネスモデルのことである。メルカリの場合、「出品したい人」と「買いたい人」をプラットフォーム上でマッチングすることで、その決済手数料から収益を得ている。
また、メルカリのアプリの形式として登録料ならびに出店料が無料、実名登録不要ということもあり、その手軽さから多くのユーザーが出品することにより、サイトとしてコンテンツが豊富になっている。 従来のヤフオクを始めとするオークションサイトも仕組みは同じあるが、出店が有料であることなどがハードルとなり、一部のユーザーを取り逃がしている状況があった。
そして、出品者側にも購入者側にも安心して買い物ができる仕組みが整っていることも成功の要因の一つとなっている。それぞれどのような仕組みなのか、次章で顧客ニーズとの関係性から見ていく。
どのような顧客ニーズを満たしているのか?
メルカリは、オンラインのフリーマーケットのプラットフォームとしての機能を提供している。
冒頭で紹介した「ヤフオク」ではヤフーアカウントの所有者を始め、先行的に多くの顧客を獲得しており、同業他社の中では圧倒的に多くの顧客が利用している。ただ先述した通り、出品のために出店料などを始めとしたハードルがあるため、一般的にITに疎いとされる女性の顧客などを中心に登録者数は伸び悩んでいた。
対するメルカリは、主に女性の市場で差をつけ成長した。
特徴としては、先ず携帯アプリから始まったという性質ある。身の回りのモノをすぐに売りたいと思う女性が初期からの顧客であった。
また、メルカリは商品の回転が速いということも大きな特徴である。アプリ内で検索すると、大抵いい商品は「SOLD」という表記となり、サイト上に残っている状況。そのことから、顧客の中にはサイトに掲載すると「売れる」という認識が生まれる。加えて、検索条件を保存している買手のユーザーのスマホにはプッシュ通知がいくようになっており、結果的に利用者の多くは1日に何回もメルカリを覗くことになる。
「メルカリ」代表取締役の山田進太郎氏は、取材で下記のように答えている。
「Amazonや楽天は何か買うモノがあって訪れるユーザーが多いのではないしょうか。一方でメルカリは何気なく訪れる気軽さがあり、無目的にtwitterを開く感覚に近いと感じています。何かないかなと細切れの時間にウインドーショッピングをする感覚です。」
さらに、ユーザビリティの観点からもヤフオクなど他社と比べるとシンプル で、「とにかく出品が簡単」「送料の設定を簡単」などかゆいところに手が届くサービスとして設計されている。先に紹介した山田進太郎氏は、同じ取材で以下のように述べている。
「プロダクトの質ではないかと思います。質の高いスマホアプリを作る のは意外に難易度が高い。アプリ開発はiOS、Android、サーバーサイド の3人は必要で、当初からいい開発チームを作れた点が成功要因のひとつかと思います。リリース後は地道に改善し続けました。 チュートリアルやユーザーガイドを磨いて、利便性を高めることを心掛けました 。広告 もユーザー獲得単価が読みやすく、要所で投下し、うまくユーザーの密度を上げていきました」
上記のことから、「身の回りのモノを売りたい」、「簡単に出品したい」、 「できれば手数料などの登録のハードルが低いほうがいい」などの気軽に身の回りのモノを販売したいというニーズに応えていることに徹底して向き合うことが急成長の理由である。
どうやって儲けているのか?
メルカリの収益源は購入者の購入金額の10%が決済手数料としてメルカリ本体に入るようになっている。 具体的なお金の流れとしては、購入者⇒メルカリ⇒出品者という流れで、一度メルカリに資金がストックされ、購入者の手元に無事に商品が到着 すると、出品者手数料が引かれた残額が入金されるという仕組みになっている。その際にメルカリは10%の決済手数料を取得するようになっている。
要するに、アプリ内での取引額が増えれば増えるほど、メルカリの収益は増大するということになる。
今後も、メルカリは様々な領域でこのマッチング型のプラットフォーム事業を展開していく予定をしており、ますますの成長が見込まれている。
まとめ
メルカリは既存の競合他社のヤフオクなどのサービスと比べ、登録料などの ハードル、女性顧客でも簡単に出品ができるというシステムの利用し易さ、 商品の回転数の高さ、掲示板やSNSを覗く感覚でウインドーショッピングをしてもらう仕掛けによりアプリの閲覧機会が多くなるなどの要因から、独自 の立ち位置を確立し、急成長を遂げることができたのである。
また、同社は今後、米国市場への進出や、国内での新規サービス・新規アプリの発表を多数予定しており、今後もメルカリの動向に目が離せない。
参考資料
「メルカリ」、米国進出で一気に勝負へ
なぜメルカリは、そっくりのヤフオクがあるのに急成長できた?その究極の謎と答え
メルカリ、初の黒字化 売上高は100億円を突破