リノベる株式会社
上場を見据えて急成長するリノベマッチングサービス
「リノベる。」という中古マンションをワンストップでリノベーションできるサービスを生み出した山下智弘氏。2010年の創業から破竹の勢いで成長し、2017年3月期の売上は40億円を超える。なぜ、これだけの成長を遂げることができたのだろうか。
リノベる。の凄さ
渋谷駅10分圏内に4900万円で家が持てる
物件検索サイトで渋谷駅10分以内で夫婦で住める広さの物件を探してみても、「バス25分 停歩1分」などの物件ばかりで駅から徒歩10分圏内の物件などは見当たらず、また価格も7000万円を超えるものが散見される。
そんな中、リノベる。というサービスを通じてとある夫婦が渋谷駅から徒歩10分以内、工事費込4900万円の物件を購入することができたという。
その理由は、物件価格の安さにある。
上記の物件は、築50年で人が住まなくなってから15年経っていて、内装の状態はひどかったが4000万円弱で購入できるものだった。リノベる。では、そうした物件をリノベーションすることで、新築に負けるとも劣らない内装の部屋に変えることができる。
また、全国200社近い不動産業者と提携しており、なかなか市場に出回らないリノベーション向きの中古マンションの情報にリーチできるのもその凄さを生んでいる要因だ。
セミオーダー制で自分好みにアレンジできる
リノベる。では、約50社の設計・施工業者や建材メーカーと提携することで、間取りや壁・床の材質、キッチンやお風呂などの種類を選んで内装を簡単にデザインしていくことができる。
物件の広さによって費用は変わるが、だいたい700万円から1600万円の幅で顧客はリノベーションを行うことができる。
どうやって儲けているのか?
リノベるが行っているのは、不動産会社や施工業者、設計事務所、メーカーをリノベる。というプラットフォームの上で束ねてお客様と引き合わせるマッチングサービスだ。
売上は工事請負費用で占められる。工事の請負単価は900万円前後を推移しているが、請負件数がどんどん伸びているのが売上増の理由だ。2017年の請負件数は前年比130%で526件まで伸長している。
マネタイズの方法は「パートナー企業からの加盟金」「設計事務所や施工業者へのマッチングフィー」の2つ。2016年の決算公告によると、約7500万円の黒字は出しているものの、まだまだ投資段階だという。今後、売上拡大とともに収益化を図っていくのだろう。
強烈な原体験
創業者の山下智弘氏は中学から大学までラグビー選手として活躍し、ラグビーでリコージャパン株式会社の実業団に入社している。しかし、体格が小さかったこともあり歯が立たず、東京にある1軍ではなく大阪の2軍に配属されたという。深い挫折を味わい、1年でラグビーも会社もやめてしまう。その後、先輩のツテでゼネコンの「地上げ屋さん」になるのだが、そこで強烈な体験をすることになり、その体験が後にリノベる。へと繋がっている。
経歴
- 1997年近畿大学理工学部を卒業
- 1997年リコージャパン株式会社の実業団員として入社
- 1998年中山商事株式会社入社3ヶ月間の休暇を取り、ラグビー時代の仲間を訪ねて
アメリカとヨーロッパを中心に7ヶ国まわる。 - 2000年有限会社東西新風堂入社2年半の修行を経て、デザインから施工までを1人でできるようになる
- 2002年デザイン事務所field設立
- 2004年株式会社es設立
- 2010年リノベる株式会社設立
「あなたに人生を奪われた」
24歳でゼネコンの建築現場を監督するアルバイトをがむしゃらにこなし、2年で社内でも努力を認められえて企画部門へと配属される。そこでの初仕事であり、それが最後の仕事となったのが団地を取り壊して新しいマンションを立てるプロジェクトだった。
住民へ立ち退きの交渉をうまく進めていく中で、おばあちゃん1人で住んでいる1戸だけが話すら聞いてくれなかったようだ。現場に通いつめて親しくなっていく中で、おばあちゃんはある思いがあることを口にする。
おばあちゃんには、僕と同じくらいの年のお孫さんがいること。
そのお孫さんとは、ずいぶんと疎遠になってしまっていること。
恥ずかしくて言えなかったけど、実は今の家にいつか孫が帰ってきてくれると信じていること。だから、家を離れるわけにも、手放すわけにもいかないということ。
そこで、立ち退く人にご自身の住居に加えて1戸提供していた、その1戸をお孫さんにプレゼントするのはどうかと提案する。提案を受けて、そのおばあちゃんは了承してくれたという。そして、いざ竣工を間際にして、そのおばあちゃんに話かけると想像もしていなかった言葉をかけられる。
「あんたが私の人生を奪った」
住み慣れた思い出の場所が変わっていくのを見て、そのおばあちゃんも気持ちが抑えられなかったのだろう。そんな言葉を聞いた山下智弘氏は、自分がしていることに自信が持てなくなり、もやもやした気持ちを抱えることになる。そして、3ヶ月間の長期休暇をとって海外を回っている。
もやもやが、リノベる。へと形を変える
ラグビー時代の仲間を訪ねて海外を回っていくのだが、その仲間のいずれもが自分たちなりに工夫して古いアパートをおしゃれに変えているのを見て衝撃を受けている。
これは何なのだろう。古い建物なのに、それを自分たちでかっこよくしている。日本に戻っても、その衝撃がずっと頭の中に残っていました。
また2000年ぐらいに起こっていたカフェブームの最中で、独自の空間を作っている店舗デザインの業界へと足を踏み入れている。右も左もわからない中で2年半修行し、一通り内装工事をこなせるようになっている。
そして2002年11月には個人事業主として独立し、当時まだ言葉としても定着していなかったリノベーションを事業として行い、2004年には株式会社化している。そして、山下智弘氏のブログを見ると2007年10月には現「リノベる。」に通じるサービスをスタートしたと述べている。そして、3年後の2010年4月に「リノベる。」を設立。以後躍進を続け、2017年には従業員規模は200名を超え、売上も40億を超えている。